PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィサー)は、プロジェクトの円滑な遂行を支援する極めて重要な役割です。PMOの需要は年々高まっていますが、未経験からこの職域に転職するのは容易ではありません。しかし、戦略的にキャリアを積み重ねれば、未経験からでもPMOへの挑戦の道は決して閉ざされていません。
本記事では、未経験からPMOに転職する具体的な方法について解説します。どのような業界・企業でPMOの求人が見られるのか、内定に有利な経歴や準備すべき点は何か、さらに転職活動での心構えなどをお伝えします。
未経験からPMOに転職する方法
中途採用で転職して未経験からPMOになる方法には、以下2つの選択肢があります。
- 未経験可の求人に応募してPMOとして転職する
- 別の職種で転職後にPMOにキャリアチェンジする
それぞれの方法について、詳しくみていきましょう。
未経験可の求人に応募してPMOとして転職する
こちらは未経験者をポテンシャル採用で募集している企業の求人に応募して、最初からPMOのポジションで内定をもらい転職するケースです。PMOは比較的新しい職種であり、既存社員が不足しているため、入社後に教育が必要な未経験の人材にも広く門戸を開いている会社があります。
この場合のメリットは、内定をもらうのは大変ですが、入社後は確実にPMOのキャリアを歩めることです。企業独自の研修プログラムを通じて、プロジェクト管理の基礎から実務までをゼロベースで学ぶことができます。
一方でデメリットは、業務のキャッチアップに時間がかかる点です。企業によっては、PMPなどの資格取得を求められるケースもあり、学習の負担が生じます。また、完全に未経験の場合は年収が低くスタートする可能性があります。
このルートを選ぶ際は、PMOの仕事に対する高い熱意と学習意欲が必須です。研修を真剣に受講し、短期間でスキルを身に付ける覚悟が必要不可欠です。将来のキャリアビジョンをしっかりと持って臨む必要があります。
別の職種で転職後にPMOにキャリアチェンジする
もう一つの方法は、システムエンジニア(SE)など別の職種で働いた後に、社内でPMO補佐のポジションにアサインされるなどして実務経験を積んでから、PMOへとキャリアチェンジするパターンです。転職活動をしてみて、なかなかPMO職で内定がでない場合は、SEやIT技術者など後々PMOへのキャリアチェンジが可能な職種での入社を狙ってみましょう。
この方法のメリットは、会社や業務を変えながら柔軟にキャリアを作れることです。業界に身を置くことで、企業の文化や業務フロー、PMOで求められる知識なども把握しやすい状況にあります。キャリアチェンジ後のスキルの付与もスムーズです。
一方でデメリットは、IT職に就いたからといって必ずしもPMOになれるとは限らないという点です。また、希望がかなったとしてプロジェクト管理の基礎知識やスキルがない場合、そこからPMOの実務をこなすまでに一定の時間を要します。社内の研修を受講するなど、独学での準備も必要でしょう。
部門の異動と並行してPMOへキャリアチェンジする場合は、業務の移行期間に負担がかかります。現行業務とPMOの両立は大変な労力を強いられるでしょう。
このルートを選ぶ場合は、事前にPMOの仕事内容や求められるスキルを十分に理解しておく必要があります。独学でプロジェクトマネジメントの知識を身に付け、部門移籍に向けて着実な準備を行いましょう。
いずれのルートを選んでも、PMOという職種に対する高い意欲と熱意が何より重要です。計画的にキャリアを積み上げることで、中途入社からでもPMOへの道は開けます。
未経験からPMOに転職する際に有利な経歴
未経験からPMOに転職する際に有利な経歴は、以下のようなものがあります。
システム開発経験
PMOの需要が最も高いのはシステム開発プロジェクトにおいてです。そのため、何らかのシステム開発に関連する実務経験があれば大きなアドバンテージとなります。
具体的には、以下のような経歴が有利に働きます。
- SE(システムエンジニア)としての開発経験
- 要件定義やシステムテストなどの上流工程の経験
- プロジェクト管理ツールの実務経験
システム開発の一部でも経験があれば、PMOに求められる基礎知識を身につけやすくなります。開発現場のプロセスやPM業務の実態を理解しやすくなります。
プロジェクト経験
プロジェクトに関わった実務経験があれば、PMOの仕事を見通しやすくなります。PMOはプロジェクトチームとのコミュニケーション能力が何より重要です。
具体的には以下のようなケースが有利になります。
- プロジェクトメンバーとして関わった経験
- プロジェクト遂行上の課題に直面した経験
- プロジェクト管理のスキルを磨いた経験
このようにプロジェクトの実態を体感しておけば、PMOに転職した際の適応がスムーズになります。PMOに求められるコミュニケーション力や目利きの感覚も身につけやすくなります。
管理職経験
未経験からでもPMOになれる可能性は低くはありませんが、管理職としての経験があれば有利になります。
管理職として以下のようなスキルを身につけていれば、PMOへの転職がしやすくなります。
- プロジェクトを統率する実務経験
- スケジューリングやリスク管理のスキル
- メンバー間の調整力
- 課題解決への目利き力
管理職として培った上記のスキルがあれば、PMOに必要な役割をよりスムーズに果たせる素地があります。
このように未経験からでもPMOになれる職場は存在しますが、何らかの経験を持っていれば、内定を勝ち取りやすくなるでしょう。特に開発実務やプロジェクト管理、メンバー統率の経験があれば、企業の信頼も得やすくなります。転職活動の際には、そうした経歴をアピールすることが重要になります。
転職後にPMOへのキャリアチェンジが狙える業界や会社
社内異動や配置転換、出向などの手段でPMOにキャリアチェンジできる可能性があるのは、どのような業界や会社なのでしょうか。以下で説明します。
システムインテグレーター(SIer)
SIerではシステム開発プロジェクトが多数あり、PMOの需要が高いです。それだけPMOへ転身するチャンスも豊富にあります。
大手SIer
プロジェクトの規模が大きく組織運営が確立されているため、PMOのキャリアパスが用意されていることが多いです。システムエンジニア職からプロジェクトマネジメント職への転身がスムーズといえます。
ベンダー系SIer
自社ソフトウェア製品の導入支援プロジェクトがメインですが、PMOが不可欠です。コンサルタントやプリセールス、システムエンジニアとして製品の専門知識があれば転身もしやすい職場です。
中小SIer・ソフトハウス
会社によってはPMOの体制が未整備なケースもあり、スキルアップがしづらい面もある。一方で従業員ひとりの裁量が大きく、短期間でPMOとして大きな役割を担える可能性もあります。
コンサルティングファーム
コンサル業界ではクライアントプロジェクトの遂行支援が業務の中心です。そのためPMOの需要が非常に高く、社内での転身の機会が豊富にあります。
外資コンサル
アクセンチュア、デロイト・トーマツ・コンサルティング、PwCコンサルティングなどPMOの採用に積極的です。プロジェクト管理に関する高度な研修制度があり、OJTでの実務指導の機会も提供されます。
国内コンサル
ベイカレントコンサルティング、アビームコンサルティングなどPMOの求人が一定数出ており、コンサルタントとして入社後にPMOへのキャリアチェンジも可能です。
中小コンサル
大手コンサルティングから独立したブティックファームや新興系のファームはプロジェクト支援業務が中心で、PMOの案件が豊富です。
ユーザー企業
自社製品の導入プロジェクトや社内システム開発プロジェクトが複数存在するユーザー企業にもPMOが求められます。社内SEなどからPMOへの転身の機会は一定数あります。
事業部門
社内プロジェクトを支援するPMOに需要があり、企画職やSE職からキャリアチェンジできるケースがあります。
開発部門
大規模なシステム開発プロジェクトがあり、PMOが重要な役割を担います。技術職から転身の機会があります。
情報システム部門
自社内のIT全般を担当する情報システム部門であれば、社内SEからPMOへのキャリアチェンジが可能です。
このようにIT・システム関連の業界でPMOの需要が高く、キャリアを変更するチャンスが多くあります。ただし企業によってはPMOの体制が未整備の場合もあり、求人自体が出にくいこともあります。
転職する際は、PMOの体制が整っているか、求人が出やすい環境かをリサーチしておく必要があります。特にユーザー企業の場合は、PMOの求人が表に出にくい可能性があるので注意が必要でしょう。
いずれの業界に転職する場合でも、プロジェクト管理の基礎知識やPMの資格取得は重要です。事前に一定の準備をしっかりと行い、転職活動に臨むことが求められます。
計画的にキャリアを積み重ねることで、PMOへの転身のチャンスを確実に掴めるはずです。
未経験者をPMOとして受け入れる代表的な職場
未経験者をポテンシャル採用でPMOとして受け入れる代表的な職場として「プロジェクトマネジメント専門の会社」を紹介します。
プロジェクトマネジメント専門会社とは
プロジェクトマネジメント専門会社とは、プロジェクト支援をメイン業務とする企業のことを指します。クライアント企業のプロジェクトに対して、PMOやPM(プロジェクトマネージャー)を派遣する役割を担っています。
これらの会社では、PMOや関連業務に特化した人材育成プログラムが整備されており、未経験者でも一定の研修を経れば即戦力として活躍できる環境が用意されています。
未経験採用が積極的に行われる理由
プロジェクトマネジメント専門会社が未経験採用に積極的な理由は主に2点あります。
PMOの継続的な需要確保
プロジェクト支援がメイン業務だけに、常にPMOなどのプロフェッショナル人材を確保する必要があります。そのため、未経験者の新規採用に力を入れています。
自社の考え方に立ったPMO育成
プロジェクト遂行の考え方やマネジメント手法には独自のノウハウがあります。企業は未経験者に対して初めからその考え方を叩き込める利点があります。
具体的な企業例
代表的なプロジェクトマネジメント専門会社には以下のような会社があります。
- マネジメントソリューションズ
- 日本プロジェクトソリューションズ
これらの企業では新卒・中途を問わず、プロジェクトマネジメントの基礎研修からスタートできます。一定の研修を終えれば、クライアント先に派遣されPMOとしての実務経験を積むことができます。
採用時の選考で求められる資質
未経験でも採用の対象となりますが、入社後に従事する業務の難易度は高く、選考の時点でプロジェクトマネジメントへの高い関心と学習意欲は必須となります。またPMOに向いている要素として、以下のような資質があげられます。
- ロジカルシンキング力
- コミュニケーション能力
- 課題解決力
- 調整力
企業独自の選考を通過できれば、未経験からでもPMOのキャリアを歩むチャンスが得られるでしょう。プロジェクトマネジメント専門会社は、そうした人材の登竜門として有力な選択肢となります。
PMOは高度な専門性が求められる職種ですが、熱意と努力次第でキャリアチェンジのチャンスは十分にあります。志を持ち続け、着実に歩を進めれば、いつかは夢を掴めるはずです。未経験からPMOを目指す全ての方に、本記事が将来への指針となれば幸いです。
コメント